調査当日の夜。
家の前に張り込んでいた私の携帯にUさんから「今、妻が出ました」というメールが届いた。
彼女と同じバスに乗り、浮気相手との待ち合わせ場所へ。
待っていたのは50歳前後の男性。
後頭部がだいぶ薄くなり、ネズミ色のコートを着たいわゆる「普通のオジサン」だ。
タクシーに二人が乗り込んだ二人の跡を、こちらもタクシーと待機してあった車でつける。
彼らが向かった先は、川沿いのラブホテル。
男性が運賃を払うのを待ちきれないように、女は小走りで入り口へと向かっていった。
大抵の場合女性は男性と手をつなぐか、一歩後からついていくことが多いが、このときはむしろ女性が急かすような素振りも。二人の関係が短くないことを確信した。
2時間後、再び姿を現した浮気相手と妻を乗せたタクシーは、まずはUさん宅で家に停まり、続いて男の自宅へと向かった。
ホテルに入るときと出たときの写真を証拠として後日提出。
はっきりと妻の顔が映った写真を見て、思わず言葉を詰まらすUさん。
「分かってはいましたがさすがにキツいですね。こんな風に笑うのを、随分見ていなかったような気がします」。
絞りだすようにしてそう言うUさんの顔を、私はまともに見ることができなかった。
その後のことはどうなったか分からない。
聞きたい気持ちも山々だけれど、黒子に徹するのが自分の仕事。
そしらぬフリで「その後いかがですか」と電話することもできるが、そうして辛い記憶を思い出させるのは本意ではない。
大切な我が子と共に新しいスタートを切り、良い人生を送っていることを願ってやまない。
※ご本人の了承を得て記載。年齢、背景などは変えています。